トナミ運輸事件(2)~一審判決と控訴審での和解

 前々回に続き,トナミ運輸事件の一審判決と控訴審での和解をご紹介します。

【判決概要】
 一審の富山地裁は,原告の本件内部告発は正当な行為であって,法的保護に値するというべきであり,被告は,原告が内部告発 をしたことを理由に,これに対する報復として,原告を異動させた上,原告を極めて補助的で特に名目もない雑務に従事させ,更に長期間にわたって昇格させな いという原告に不利益な取扱をしたこと及び原告に対する退職強要行為をしたことは明らかであるなどとして,請求の一部を認容しました。

【評価】
  この判決は,公益通報者保護法制定以前に判例上確立された内部告発が保護されるための3要件,すなわち,①告発事実の真実性(ないし真実であると信じるに 足りる相当な理由),②公益目的,③告発手段の相当性の3点を挙げた上,③については,会社のこれまでの違法行為の経緯と通報者の立場に照らし,会社が通 報を受けたとしても是正措置を取る可能性が極めて低かったことを認定して,内部努力を欠いたまま外部に告発を行ったことは,不当とまではいえないと判示し ました。
 論理及び結論いずれも妥当と評されているものであり,公益通報者保護法下でも,同法第3条第3号ロ(証拠隠滅の虞)の要件を満たす可能性が高く,そのまま妥当する判決といえます。

【控訴審における和解】
  その後の報道によれば,同訴訟は控訴審(名古屋高裁金沢支部)にて和解が成立したとのことです。原告側によると,一審の富山地裁が命じた賠償金など約 1356万円に上乗せした和解金が同社から支払われるほか,和解条項に同社が「本件を教訓に適正で公正な業務運営を心がけ,信頼回復に努める」とする内容 が盛り込まれたとのことです(朝日新聞平成18年2月16日)。

(続く)

 次回は,この長期化した事件において,初期の段階で自浄作用を発揮する余地がなかったのかどうか,そのためのキーポイントを探ります。

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