内部通報の外部窓口を顧問弁護士に任せた場合の問題点

内閣府発表の「平成20年度 民間事業者における通報処理制度の実態調査報告書」によると、内部通報制度の窓口を外部に設置している会社のうち実に53.7%の事業者が「弁護士(顧問弁護士)」に依頼しているとのこと。


今回は、顧問弁護士に内部通報の外部窓口を依頼する上での問題点を考えてみたいと思う。


顧問弁護士を外部窓口として活用する場合、一番の問題は経営陣の関与した不正については経営陣から相談を受ける可能性が考えられることである。


また、労働問題についての通報のように、会社と対立する内容であることが一般的な場合には、いずれ会社側から相談を受けることも多いと思われる。

(私どもが運営する外部窓口においても圧倒的に労働問題が多いのが現実である。)


未払い残業、名ばかり管理職、パワハラ問題等、ひとたび通報があった場合、慎重に対応しようとすればするほど顧問弁護士への相談が必要となってくる。


しかし、通報を受け付ける顧問弁護士は、会社との関係では顧問契約(=委任契約)上の善管注意義務(会社の利益に最大限忠実たるべきとの趣旨も含む)を追う一方、通報者との関係では、外部相談窓口の運営者として、中立公平に相談を受けなければならない。


そのため、その両面を同時に実現することは不可能であり、これらの場合、いわゆる利益相反状態に陥ることになるものと言わざるを得ない。


そもそも、そのような虞を内包する内部通報制度であれば、社員らからの信頼も得にくく、実際に機能しづらいものと思われる。


こうした場合に備えて、本件業務を、経営そのものにタッチしない顧問弁護士以外の外部の弁護士に任せることや、顧問弁護士でも経営相談先と内部通報問題相談先を使い分けることが有効な手として考えられる。


しかし、ある程度の規模を持つ事業者ならともかく、大多数の事業者にとって顧問弁護士とは別の弁護士を内部通報の外部窓口として依頼することは現実的ではないかもしれない。


そのためにどのような制度にすべきか、是非こちらも参照いただきたい。
内部通報外部窓口サービス「フェアライン」

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