外食産業A社では,日頃勤務態度が極めて悪く,遅刻常習で,業務成績も不振が続く支店長Bを解雇しようとしたところ,BはA社に対し未払い残業手当の支払いを求めるとともに,同社の外部相談窓口に対して,残業手当未払いの事実を通報した。
Bは支店長として管理職としての扱いを受けており,月額10万円程度の役職手当を受けていた反面,残業手当の支払いは一切受けていなかったことから,支店の同程度の経験年数の正社員と比較しても,残業手当まで含めた年俸で50万円程度多く収入を得ている程度であった。
同社の支店長には,支店の職員の配置やアルバイトの採用に関して一定の権限は与えられていたものの,支店長自身の出退勤管理は本社の総務部によって行われ,同社の経営会議に出席することもなかった。
【通報後の展開】
A社は,外部相談窓口からの調査の必要性に関する意見具申を採り入れることなく,Bを,能力不足を理由として解雇したため,Bは労働組合〇〇ユニオンを通じてA社に団体交渉を申し入れ,解雇の無効確認と未払残業手当過去2年分及び慰謝料の支払いを求めるに至った。
その際,同人は社内の自己と同様の支店長の地位にある社員(もしくは,その地位にあった元社員)に対して,団体交渉への参加を募り,実際にB以外の複数の者が団体交渉に臨んだ。
近時の管理職認定の厳格化の流れもあり,A社は労働基準監督署の指導も受けて,未払残業手当の一部の支払いに応じることとし,B及び団体交渉に臨んだ現役社員らの依願退職を条件として,解雇の撤回と実労働時間ベースでの過去1年分の残業手当支払いに応じる内容で和解が成立した。
監修:田島総合法律事務所
コメントする